<ダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素膜コーティングの振動板への応用>
1,この実験について・・・ [
1-1,実験課題
] [
1-2,実験メンバー
] [
1-3,実験期間
]
2,緒言・・・ [
2-1,はじめに
] [
2-2,実験目的
] [
2-3,実験の流れ
] [
2-4,測定・比較方法
]
3,理論・・・ [
3-1,ダイヤモンドが振動板として有望な理由
] [
3-2,実用化されているダイヤモンドのスピーカー用振動板
] [
3-3,測定用マイクロフォンについて
]
4,使用器具・装置・・・ [
4-1,市販品購入品目・別途入手品目
] [
4-2,測定用器具
] [
4-3,装置
]
5,実験方法・・・ [
5-1,スピーカー用の周波数特性の良いアンプを製作
] [
5-2,測定で使用するコンデンサマイクロフォンの設計と製作
] [
5-3,コンデンサマイクロフォンの出力を増幅するためのアンプの設計と製作
] [
5-4,コンデンサマイクロフォンからオシロスコープまでのシールドの製作
] [
5-5,市販スピーカーを測定し、測定方法の確立
] [
5-6,プラズマCVD装置にスピーカーを入れるための台の製作
] [
5-7,プラズマCVD装置に入れるパーツの洗浄処理
] [
5-8,市販スピーカーの振動板にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を成膜
] [
5-9,測定・比較
] [
5-10,電子顕微鏡(SEM)を使用してダイヤモンドを見る
]
6,実験結果・・・ [
6-1,成膜1回目、2回目
] [
6-2,成膜3回目、4回目
] [
6-3,成膜5回目
] [
6-4,個体差判別測定
] [
6-5,成膜6回目
]
7,考察・・・ [
7,考察
]
8,参考文献・・・ [
8,参考文献
]
1,この実験について
1-1,実験課題
ダイヤモンドおよびダイヤモンド状炭素膜コーティングの振動板への応用
1-2,実験メンバー
●高知工科大学 電子・光システム工学科 三年 牧本崇志、松田圭弘、松久治可、山田和弘
●指導 八田章光 電子・光システム工学科助教授
1-3,実験期間
●2001年4月19日〜2001年7月26日
2,緒言
2-1,はじめに
スピーカーには数多くの種類があり、形状、素材も様々である。特に振動板の素材においては多種多様に渡り、元来から多く使われてきた紙を始め、カーボン繊維、ボロン、ベリリウム、ファインセラミックス、アルミニウム、チタン、ダイヤモンドなどが材料として利用、研究されている。中でもダイヤモンドは、振動板として理想的な性質を持つと考えられ、加工の難しさを除けば非常に有望な素材といえる。
近年、DVDなどの高音質フォーマットの出現により、可聴領域を越える高音までを録音・再生することが可能になってきた。可聴領域を越える高音(およそ20KHz以上)もオーディオの良し悪しを決める重要な要素としてとらえられるようになり、盛んに研究されている。
我々はこれを着眼点とし、ダイヤモンドを使用して振動板を製作し、どのような音質変化が得られるのかを調べるべく学生実験の自主課題として実験を進めた。
2-2,実験目的
●振動板にダイヤモンドを使用することによって、周波数特性の向上を目指す。
●スピーカーの耕造を知る。
●ダイヤモンドの成膜方法について知る。
2-3,実験の流れ
最終的な実験方法が決定するまで随分時間がかかってしまったが、最終的な実験の流れは以下のようになった。
1.スピーカー用の周波数特性の良いアンプを製作(市販キット)
2.測定で使用するコンデンサマイクロフォンの設計と製作(市販コンデンサマイクロフォンを用いて回路を製作)
3.コンデンサマイクロフォンの出力を増幅するためのアンプの設計と製作
4.コンデンサマイクロフォンからオシロスコープまでのシールドの製作(ノイズ対策)
5.市販スピーカーを測定し、測定方法の確立
6.プラズマCVD装置にスピーカーを入れるための台の製作
7.プラズマCVD装置に入れるパーツの洗浄処理
8.市販スピーカーの振動板にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を成膜
9.測定・比較
番外:電子顕微鏡(SEM)を使用して、実際のダイヤモンドを見る
2-4,測定・比較方法
市販されているスピーカーの振動板の上にDLCを成膜し、成膜していないスピーカーと成膜したスピーカーの周波数特性を比較した。
測定は、実際に低周波発信器からのsin波をスピーカーに入力し、実際に出る音を測定用マイクロフォンで拾い、周波数と音圧をオシロスコープで比較した。
本来ならばオーディオの観点から見て、音色を含めた性能の向上を目指したいところであるが、今回は音色に関しては問答無用、周波数特性が向上すれば良しとする。特に、ダイヤモンド振動板を使用すれば、高音の限界周波数特性が向上するのではないかという想定の元、実験に取り組んだ。
3,理論
3-1,ダイヤモンドが振動板として有望な理由
ダイヤモンドの特徴として
●硬質である
●密度が小さく、ヤング率が大きいため、音速が非常に大きい
●熱伝導率が高い
ということが挙げられる。
また、スピーカーに使われる振動板の理想的な条件としては、
●薄いくて丈夫であること
●放熱性がよいこと
などが挙げられる。
振動板は音を出すときには激しく振動する。その振動に耐えられるような強度が必要である。また、分厚い振動板は、振動させるために必要な入力が大きくなってしまうので、薄い方が効率がよい。また、スピーカーの音の変換効率は約1%とまで言われており、入力されたほとんどの電気エネルギーはボイスコイルの発熱となり消費される。放熱性の良い振動板であるほど、ボイスコイルで発生した熱を逃がしやすくなり、安定した音質を維持出来、かつ大入力にも耐えることが出来るようになる。
これらの特徴を兼ね備えるダイヤモンドは、良い振動板を製作するには理想的な素材だと考えられる。
3-2,実用化されているダイヤモンドのスピーカー用振動板
ダイヤモンドを使用した振動板は、既に市販化されている。過去に日本ビクターと住友電気工業が開発に携わっていた。1980年代、オーディオ市場が好調であった頃、各社ともダイヤモンド振動板を開発し、オーディオ用スピーカーの高音部を受け持つツイーターとして実用化に至っている。
しかし近年、ダイヤモンド振動板を使用したスピーカーはめっきり見なくなった。我々が調べて確認が出来たのは、SONYのアモルファスダイヤモンド蒸着振動板を使用したイヤホン、ヘッドホン、KENWOODのプラズマダイヤモンド振動板を使用したカーオーディオ用のツイータースピーカーだけである。有効な素材であるはずが、ほとんど使われていない。しかも、現在使われているのは非常に小型スピーカーの振動板としてである。ダイヤモンド振動板が使われなくなった理由はいくつか考えられる。
●ダイヤモンド以外にも、音速の早い有効な素材が見つかった
●コスト
●加工の難しさ
などである。
また、近年、スピーカーの高音部を受け持つ振動板に、ハード系素材ではなくソフト系素材が多く使われるようになってきた。ソフト系素材を用いて振動板を作った方が柔らかな音質を奏でることが出来るためであるが、スピード感はハード系素材には及ばない。ユーザーの好む傾向や市場の傾向が変わってきたということもあるが、おそらくコスト問題が第一であったと考えられる。とすれば、コストを差し置いて考えると、やはりダイヤモンド振動板を使ったスピーカーを実現したい限りである。
3-3,測定用マイクロフォンについて
ダイヤモンド振動板を使用したスピーカーを製作するにあたり、測定用マイクロフォンの準備が必要となった。マイクロフォンは、大別するとダイナミックマイクロフォンとコンデンサマイクロフォンに分類出来る。
ダイナミックマイクロフォンは、ムービングコイル型ダイナミックマイクロフォンと呼ばれていて、一般的にもっとも知られているマイクで、人の耳では鼓膜に当たるダイアフラムと呼ばれる振動板と、その中央に取り付けられたコイル、それを挟むようにおかれた磁石から構成されている。ちょうどダイナミックスピーカーを小さくした耕造で、音響信号と電気信号の変換プロセスを逆にしたものと考えられる。きわめてシンプルな構造であるため、気候条件による制約も少なく取り扱いが簡単である反面、振動板であるダイアフラムに重いボイスコイルを接合した耕造のため感度が低く、周波数特性の両端で感度が極端に落ちる傾向がある。
コンデンサ型マイクロフォンは、高級マイクの代名詞とも言える。2枚の平行した金属板に直流電圧をかけると、電極間に電荷が蓄えられるのがコンデンサである。この金属板の一方をダイアフラムとして置き換えた物がコンデンサマイクロフォンの動作原理である。ダイナミック型のようなボイスコイルが不要で、1枚の軽くて薄い振動板で済むため周波数特性が非常に優秀である反面、湿度に非常に弱く、取り扱いが難しいとされている。
また、廉価版のコンデンサ型マイクロフォンとして、エレクトレット型と呼ばれる方式のものがある。これはダイアフラムにエレクトレット現象という原理を応用した半永久的な帯電を施し、コンデンサに必要な成極電圧を不要にしたもので、内蔵アンプの電源として1〜3V程度で済む。通常のコンデンサマイクロフォンと比べて遙かに安価な割に、非常に特性も優れているため、ラジカセなどの組込用マイクとして多く使用されている。
この実験では、20KHz以上の高音域を正確に測定する必要があるため、20KHz直前から感度特性が大きく落ち込むダイナミックマイクロフォンは不適当である。偶然、1個50円程度のコンデンサマイクロフォン(価格から考えておそらくエレクトレット型コンデンサマイクロフォンだと思われる)が手元にいくつか有った。安価なものではあるが、20KHz以上も難なく集音することが出来たため予算の関係からこれを流用することになった。
4,使用器具・装置
4-1,市販品購入品目・別途入手品目
●スピーカーユニット(2種類) 左…380円 右…50円
●アンプ ELEKIT PS-3236A
●コンデンサマイクロフォン
●バイポーラトランジスタ C1815 CROH
●アルミケース
●アルミ板
●各種抵抗
●各種コンデンサ
●各種工具
4-2,測定用器具
●オシロスコープ1 KENWOOD 20MHz OSCILLOSCOPE CS-4125
●オシロスコープ2 IWATSY-LeCroy LT364
●低周波発信器 KENWOOD OSCILLATOR AG-203D
●テスター GBW 7000A
●電圧源 KENWOOD REGULATED DC POWER SUPPLY PR18-1.2A
●電池各種
●結線
4-3,装置
●マイクロ波プラズマCVD装置
●電子顕微鏡(SEM) JEOL JSM-5410LV SCANNING MICROSCOPE
●光学顕微鏡
5,実験方法
5-1,スピーカー用の周波数特性の良いアンプを製作
市販キットを説明書通りに組み立てただけなので詳細は省略する。特記すべき点は、BTL(ブリッジドトランスフォーマーレス)接続方式により、安価な割に周波数特性が飛躍的に向上している点である。購入したアンプはステレオ対応であったが、測定に使用するにはモノラルで十分なため、ステレオアンプの左右チャンネルをブリッジ接続してハイパワーモノラルアンプとして構成した。回路は以下の通りである。
5-2,測定で使用するコンデンサマイクロフォンの設計と製作
測定用コンデンサマイクロフォンは、先にも記したが、偶然入手出来たコンデンサマイクロフォンを流用した。
5-3,コンデンサマイクロフォンの出力を増幅するためのアンプの設計と製作
コンデンサマイクロフォンは、単体では出力が非常に小さいので、オシロスコープに出力する前にアンプで増幅する必要がある。
この実験では、バイポーラトランジスタ(C1815 CROH)を使用してアンプを設計、作成した。増幅率が低かったり、周波数特性が悪かったりと、設計は数回に渡ってやり直した。
5-4,コンデンサマイクロフォンからオシロスコープまでのシールドの製作
マイクロフォンと出力用アンプは準備が出来たが、オシロスコープに接続すると、激しくノイズが混入してしまうことが分かった。ノイズが混入してしまった大きな原因はシールドを一切施していなかったことである。マイクロフォンからアンプ、アンプからオシロスコープ間の接続を、クリップタイプの単線の結線で接続していたために、結線の部分がアンテナとなって外部のノイズを拾ってしまった。この状態では、結線に少し触れたり、振動が加わるだけで大きくノイズがオシロスコープに現れてしまい、スピーカー特性の測定は不可能である。よって、ノイズ対策としてマイクロフォンからオシロスコープまでの区間全域にシールドを施すことになった。
まず、コンデンサマイクロフォンと出力用アンプ、さらに双方で共通に使用するボタン電池用フォルダを同一基盤上に製作した。購入したアルミケースに、マイクロフォンが丁度顔を出すような穴を開け、集音を可能にした。また、出力を得るためにアルミケースに同軸ケーブル用のコネクタを取り付けて内部配線し、アルミケースの蓋をネジ止めした。出力用の同軸コネクタとオシロスコープを同軸ケーブルで接続すれば、外来ノイズを遮断することが出来る。完成したアルミケース入アンプ・電源内蔵コンデンサマイクロフォンを以下に示す。
5-5,市販スピーカーを測定し、測定方法の確立
周波数特性の測定は、想像していた以上にシビアで難しいものであった。測定時の問題点と解決方法を以下に挙げる。
5-5-1,マイクロフォンとスピーカーの距離によって音圧が変わる。
マイクロフォンとスピーカーの距離で、明らかに音圧が変わってしまう。初期段階ではマイクロフォンとスピーカーを接触させるほど近づけて測定していたが、次回の影響などがあるようで、失敗となった。最終的な測定では、若干距離を空けて(1cm程度)測定した。なお、マイクロフォンとスピーカーはスタンドで固定し、距離を出来るだけ同じに保った。
5-5-2,マイクロフォンとスピーカーの角度によって音圧が変わる。
音は、高周波になればなるほど指向性が増し、直進性が向上する。それに伴って、マイクロフォンとスピーカーの角度が少し変わるだけで、音圧が大きく変わってしまう問題が出てきた。この問題は、オシロスコープを見ながら10KHzで音圧が最大になるようにスピーカーをスタンドに取り付ける角度を微調整して解決した。
5-5-3,周囲の音を拾ってしまう。
こればかりはどうしようもないのだが、通常の人の会話などは、測定しようとしている周波数帯よりもずっと低いので、影響は少ないと考えられる。測定は我々以外の人もいる実験室で行ったが、周囲の話し声はオシロスコープに直接出ることはなく、誤差の範囲として測定した。最終的な測定では、1000sweepsの平均値を出し、かつ極端な周波数は切り捨てるオシロスコープの機能を使用して測定した。
5-5-4,机の上で測定すると、反射波の影響が出る。
机の上にマイクロフォンとスピーカーを置き測定すると、反射波の影響を受けてしまい、音の粗密がばらつくことがある。この問題は、スタンドを使って机から高さを稼ぎ、そのしたには何らかの吸音材をおくことにより、影響を出来るだけ押さえられるように努めた。
5-5-5,マイクロフォンを入れたアルミケース自体が共振してしまい、スピーカーから出ている音以外の共振音が混入することがある。
この問題は根本的な解決方法はないと思われる。どのような物体にも共振周波数はある。共振してしまった場合には、オシロスコープでの測定値が安定せず、明らかにおかしい値となるので、若干測定周波数をずらしたり、測定不能として測定を進めた。
5-5-6,2種類のスピーカーを測定比較する場合、1つ目と2つ目のスピーカーで配置が換わってしまう。
初期段階では、スタンドを用いていなかったため、比較するたびに位置が大きく変化してしまっていた。スタンドを用いて、スタンドの位置を固定することによりこの影響を最小限に抑えられるように努めた。
5-5-7,予期せぬ外来ノイズが入ることがある。
実験中、スピーカーの音以外のsin波形がオシロスコープで見られることがあった。交流電源の周波数(60Hz)が混入したときには対処が出来たが、原因不明の高周波が混入することが度々あった。原因として考えられるのはエアコンの振動、また実験室のコンセントからの供給電源がクリーンでないため、電源から高周波等のノイズが混入してしまう、周辺機器が我々に聞こえない帯域のノイズを発生している、などである。原因が解明出来ない場合は、その時間は測定不能とし、後日測定した。
5-5-8,人間の耳では通常聞こえない20KHz以上の音の測定をするため、音圧の感覚が掴めない。
これは実験を始めた初期の段階で失敗したことである。実験に用いたスピーカーは非常に小型のもので、最大入力電圧も低い。10KHz付近は我々の耳でに良く聞こえ、非常に喧しい。しかもこの付近はスピーカーの特性も良く、良く鳴るので入力レベルを絞ってしまう。しかし、18KHz以上の高音域に周波数を上げていくと音圧が下がり、測定しにくいために入力レベルを上げてしまう。我々に聞こえない帯域になると、いつの間にか過入力状態になってしまい、ボイスコイルが熱を持ち振動板が溶けてしまった。測定の際は、多少喧しいのを我慢して、一定の入力レベルにして測定した。
5-6,プラズマCVD装置にスピーカーを入れるための台の製作
プラズマCVD装置の台は小さいために、直接スピーカーをのせて固定することは不可能である。そこで、2枚のアルミ板を適当なサイズにカットし、装置に固定するための台を作った。アルミ板は一辺が45mmの正方形になるようにカットし、同様のものを2枚用意した。片方のアルミ板に、スピーカーの振動板面が丁度見えるように中心に25mmの穴を空ける。2枚のアルミ板でスピーカーを挟み込むようにしてアルミ板の4隅をネジ止めしてスピーカーを固定し、アルミ板と装置の台をネジで固定した。
5-7,プラズマCVD装置に入れるパーツの洗浄処理
プラズマCVD装置は、装置中を真空にする。その際、装置内部に油脂等が付着していると、それらが原因で真空にならないという不具合が発生するため、装置に入れるものは洗浄処理をしておかなければならない。以下に洗浄手順を示す。
1.ビーカーの中にネジ、アルミ板など洗浄するものを入れ、隠れる程度にアセトンを入れる。
2.超音波洗浄機で5分間洗浄する。
3.のち、メタノールで同様に5分間、超音波洗浄機で洗浄する。
4.取り出したネジ、アルミ板などを薬包紙の上にピンセットで取り出し、窒素エアーを吹き付けて乾燥させる。
なお、スピーカーユニット自体はプラスチック等で出来ており、これらの洗浄方法では溶解してしまうおそれがあるため、ブロアで埃をを吹き飛ばすだけに留める。
5-8,市販スピーカーの振動板にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を成膜
5-6,で作成したスピーカー固定用アルミ台にスピーカーを固定し、プラズマCVD装置の中に固定する。プラズマCVD装置は真空にするためのポンプが取り付けられていて、通常使われるロータリーポンプの他に、ターボポンプが備え付けられている。ターボポンプは非常に高価で、扱い方によっては即故障してしまう。誤ってバルブを急激に開き、圧力が一気に高くなるとモーターが焼き付いてしまうので、真空計を見ながら慎重に操作しなければならない。以下に、プラズマCVD装置の使用手順を示す。
1.装置を開け、台の上に成膜したいサンプルを固定し、装置を閉める。
2.装置の後ろの壁に付いているオレンジノブを開き、冷却水を流す。
3.緑色のノブが閉まっていることを確認してから、壁左側のブレーカーボックスの向かって右側を操作してロータリーポンプの電源を入れる。
4.ベンゼンバルブが閉まっていることを確認し、装置内部とロータリーポンプがつながっている手前向かって左側の黒色バルブを開ける。
5.真空計の電源を入れる。
6.壁右側のブレーカーボックスの向かって左側にあるターボポンプ電源を入れ、ターボポンプ制御装置の背面にある電源2つをON、それからメインスイッチをONにする。
7.ロータリーポンプとターボポンプがつながっている、手前向かって右側の黒色バルブを開けて、ターボポンプ内を真空にする。
8.ロータリーポンプとターボポンプがつながっている、手前向かって右側の黒色バルブを閉め、ターボポンプと装置内部がつながっている装置裏にあるターボゲートバルブを開ける。
9.真空計を見て10Pa以下になっていることを確認してから、ターボポンプ制御装置の[START]を押す。
10.ターボポンプ制御装置の表示が5分以内に[ACCELARETION]→[NORMAL OPERATION]に変わらなければ、装置全体を見直す必要がある。
11.ベンゼンバルブを「少しずつ」空けていき、ベンゼンタンクと装置内部までの間の管の圧を抜く。ターボポンプを使用しているので、10Pa以上にならないように注意。
12.マスフロコントローラーをONにする。
13.成膜する圧力になるまでターボバルブを閉めていく。
14.壁左側のブレーカーボックスの向かって左側にあるRFの電源を入れ、RF装置背面の電源をON、正面のスイッチをON、[LOC/REM]ボタンをON、LOCランプ点灯を確認する。
15.RFの設定電圧を任意の電圧に設定する。
16.マッチングボックスの電源を入れる。
17.RFのON、装置内部を覗き窓から見て、プラズマが発生していることを確認したら、真空計に気を配りながら任意の成膜時間、待機する。
18.時間が来たら、RFの電源を切る。
19.マスフロコントローラーをOFFし、ベンゼンバルブを閉める。
20.装置裏のターボゲートバルブを開けて、1分程度内部ガスをロータリーポンプで排出する。
21.ターボゲートバルブを閉め、ターボポンプ制御装置の[STOP]を押す。
22.5分程度待機し、ターボポンプ制御装置の表示が[NORMAL]→[BRALE]になることを確認する。
23.ロータリーポンプのブレーカーをOFF、マッチングボックスOFF、真空計をOFF。
24.装置と外部がつながっているバルブを緑色のバルブを開け、外気を装置内部に取り込んで圧力を解放する。
25.装置を開け、サンプルを取り出す。
5-9,測定・比較
5-9-1,成膜条件
DLCの成膜は、6回(6回以上成膜は試みたが、記録に残せたのはこれだけである)行われた。以下の表に条件等を示す。
<DLC(ダイヤモンドライクカーボン)の成膜条件>
1回目
2回目
3回目
4回目
5回目
6回目
成膜したスピーカーの種類
50円
50円
380円
380円
380円
50円
圧力[Pa]
10
5
10
10
10
10
ベンゼン流量[sccm]
10
10
10
10
10
10
RF電力[W]
100
4
100
50
50
50
時間[秒]
4
30
60
30
30×5回(合計150秒間)
30×5回(合計150秒間)
追加条件等
●予定では30秒であったが、4秒で緊急停止
●磁石をつけたまま成膜
●プラズマが発光する最低電力で成膜を試した
●磁石をつけたまま成膜
●磁石を外して成膜
(写真右下)
●磁石を外して成膜
●30秒間成膜後、冷却のため90秒間の小休止をとり、これを5回繰り返した
●磁石を外して成膜
(写真左下)
●30秒間成膜後、冷却のため90秒間の小休止をとり、これを5回繰り返した
●磁石を外して成膜
画像
膜が薄いため、写真は非掲載
膜が薄いため、写真は非掲載
5-9-2,測定
最終的な測定は、オシロスコープ2を使って行われた。スピーカーにはアンプを介して増幅された低周波発信器からの信号を入力し、スタンドに固定しておく。マイクロフォンも同様にスタンドに固定しておき、10KHz以上の任意の周波数を低周波発信器の目盛で合わせて発信した。成膜していないスピーカーとDLCを成膜したスピーカー、どちらとも同条件でオシロスコープの演算処理機能を使い、1000sweepsの波形を平均した周波数と電圧を記録し、Microsoft Excelにてグラフを作成した。
スピーカーに使ったアンプは、電圧源を使用し、10Vで動作させた。マイクロフォンには内蔵のボタン電池3Vを実験毎に新品に交換して測定を進めた。成膜条件は、5-9-1,で示したとおりである。
5-10,電子顕微鏡(SEM)を使用してダイヤモンドを見る
電子顕微鏡を使って、先輩方が製作した、シリコン(Si)に成膜したダイヤモンドを見せていただいた。写真を撮ることが出来たので、いくつか挙げておく。
6,実験結果
6-1,成膜1回目、2回目
成膜1回目は、無惨にも開始直後4秒で、5-9-1,で示した写真のようになってしまった。もともと、初めての試みであったため、どのくらいの時間プラズマに耐えられるか想像がつかなかったためとはいえ、無惨であった。しかし、この1回目の成膜実験は、今後の成膜に必要な知識を多く与えてくれた。
結果的に判ったことをまとめると、スピーカーに使われている磁石の磁力が予想以上に強かったため、プラズマが磁石の部分に集中してしまったということである。プラズマによって急激に温度上昇した磁石は、ボイスコイルに熱を伝え、その熱は薄い樹脂製の振動板に伝わった。磁石とコイルは4秒の時点では熱に耐えていたが、樹脂製の振動板が熱に耐えられなくなり、コイルに接着している部分が瞬時に溶けてしまったということになる。これは、2回目の成膜実験の時に目視で確認された事項である。
成膜2回目に、原因を突き止めるために最低電力でプラズマを発光させ、装置の覗き窓からプラズマがどの部分に発光しているのかを確かめた。プラズマは明らかにスピーカーの磁石部分に集中し、磁石が付いたままのスピーカーを装置の中に入れるのはもはや無意味であるということが判った。
しかし、成膜1回目の写真を見れば判るとおり、100Wの電力でスピーカーにプラズマが集中していたにもかかわらず、周辺部分にはビッシリとDLC層が出来ており、周辺部分が溶けたり、変形している様子はない。少なくとも4秒間は、周辺の樹脂とボイスコイルはプラズマに耐えられると考えられる。なお、どちらも測定には至っていない。
6-2,成膜3回目、4回目
3回目以降は、装置に入れる方法を工夫して行った。磁石が付いたままのスピーカーではプラズマが集中して振動板が溶けてしまうので、スピーカーから一端磁石を取り外し、スピーカーの振動板、ボイスコイル、ケースだけが付いた状態で装置の中に入れた。ここで、一端磁石を外して成膜後に磁石を元に戻し、同様に音が鳴るかのか、また一度分解するとDLCを成膜していないものとの比較が出来ないのではないかという問題が出てきたが、やってみなければ判らないので強行した。磁石はケースと接着剤で固定されているため、取り外しが困難である。380円のスピーカーが、比較的磁石が取り外しやすい耕造であったため、こちらをサンプルとして使用した。
1回目の成膜で、スピーカーの樹脂部分は100Wのプラズマを集中受けても持ち堪えた。磁石を外せば、プラズマが一部分に集中することはないので、同様の100Wでも大丈夫だろうと見込んで、60秒間成膜をした。写真では判りにくいかもしれないが、残念ながらケースの部分が長時間の熱に耐えられなかったようで、若干溶けて変形してしまった。
4回目の成膜はプラズマの電力と時間を半分ずつにして成膜した。スピーカー自体に目視での損傷はなく、成膜が成功したと言えるがかなり層が薄かった。なお、どちらも測定には至っていない。
6-3,成膜5回目
4回目の成膜は、出来た膜の層は薄いものの、スピーカー自体は無事であったので、4回目と同様の50W、30秒という条件を1セットとして、90秒間冷却のためにプラズマを停止させ、また50W、30秒という成膜方法をとった。最終的にこれを5セット行った。一度プラズマを停止させて、もう一度成膜するという方法は、DLCとDLCの間に不純物が挟み込まれる可能性が高く、決して良い方法ではないが、スピーカーが溶けてしまっては元も子もないので、この実験ではやむを得なかった。
結果は非常に良好で、目視ではっきりと判るほどのDLCの層が振動板の上に出来ていた。透明な樹脂製の振動板と比べて、DLCの膜が張られた振動板は、透過光で見ると茶色がかっている。以下に測定結果を示す。
この測定結果から分かったことは、この380円のスピーカーは、元々の個体差があまりにも大きすぎて、周波数特性の比較には向いていなかったということである。スピーカー1と2を比べても、まるっきり共通点がないと言えよう。しかも、スピーカーの数に限りがあったため、これ以上の測定が出来なくなってしまった。
6-4,個体差判別測定
6-3,の結果を考え、先に個体差のばらつきがどの程度有るのかを測定することになった。また、スピーカーは50円のほうを使用している。実はこちらの方が価格の割に、見た目は個体差が少なかった。
グラフを見ると分かるように、このスピーカーは380円のスピーカーに比べて個体差が少なかった。大きな共通点は、12KHz付近で一度ピークを迎え、14KHz付近で急激に低下していることと、23KHz付近でどの個体もピークを迎え、それ以降の音圧は低下していくということである。
6-5,成膜6回目
早速、50円スピーカーの成膜実験を開始した。しかし、50円スピーカーは磁石が非常に外れにくく、外す途中で振動板に穴が開いたり、ケースが割れたりしたため、いくつも成膜することは出来なかったが、測定結果を以下に示す。なお、ここで示すスピーカーは、いずれも一度磁石を外し、再度取り付けたものを測定している。成膜しないスピーカーの磁石を外す必要はないが、磁石を外していないスピーカーと、一度磁石を外したスピーカーで個体差が広がる可能性があるので、それを押さえるための対策である。
DLCの成膜したスピーカーはひとつだが、念を入れて2回測定した。そのうちの1回は、オシロスコープを見ながら、大きな変化が確認された周波数をピックアップし、さらに細かく測定している。
グラフを見ると分かるように、50円スピーカー1とDLC膜を施したスピーカーの特性が非常に良く似ている。
7,考察
6-5,の実験結果に非常に悩まされる結果となってしまった。成膜をしていないスピーカーと成膜をしたスピーカーがほぼ同じ特性である、という結果である。原因としては、DLCの硬度が低かった、DLC層を厚くしすぎて振動板の動きに支障がでてきた、などが考えられる。過去に商品化された製品や現行品などはいずれも、チタンなどの元来硬度が高いものに、さらに薄いDLC層やダイヤモンドの層を重ねると行ったものである。今回使用したスピーカーの振動板は薄い樹脂製で、非常に柔らかいものだった。グラフを見ると、特性はそのまま能率が低くなっているように見ることが出来る。もともとソフト系素材を使っていた振動板を、ハードに固めようという行程が間違っていたのかもしれない。もしチタン製の振動板のスピーカーが安価に沢山手には入ったら、そのスピーカーに試してみたい。
今学期の学生実験の間で学んだことは、もちろん、DLCの成膜方法やアンプの設計法、回路の知識、測定方法や、オシロスコープの使いこなし方、ノイズ対策の方法など、挙げればきりがないほど学んだが、物作りの難しさ・そして楽しさを学ぶことが出来た。少しことが進んだと思うとすぐに問題に突き刺さり、なかなか前に進めないし、解決出来ないと落ち着かない。しかし、これが実験の楽しさなのだろうと思う。今回の実験は明らかに知識不足で思うように事が進まなかったが、これを糧として今後の学習に生かしていきたい。
8,参考文献
●近代科学社 電子・情報工学入門シリーズ2 「音響・音声工学」 (古井貞熙 著)
●リットーミュージック リットーミュージック・ムック 「音響映像設備マニュアル2001」
●音楽之友社 ONTOMO MOOK AUDIO 「スピーカーに強くなる2」
●オーム社 「図解 気相合成ダイヤモンド」 (吉川昌範・大竹尚登 共著)
2001/8/8 高知工科大学 電子・光システム工学科3年 松久治可
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